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Weekly Teinou 蜂 WomanにUPした記事内テキスト抜粋Blog

権力の暴力は愚力である。わが人生トップクラスの懺悔 

さて。先日Twitterで連投した「権力と暴力」についてのツイートをまとめてみた。あくまでもくっつけたテイなので、まとまりはないかもしれない。熱いです。いわゆる熱い「懺悔文」です。
 

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どんな理由でも、大人(親・教師・先輩・上司・客)など、大なり小なりの権力者が、子や目下の者に暴力を振るうのは最低だと思う。
教育だの躾だの礼儀だの、そんな都合のいい言い訳には閉口してしまう。まだ「頭にきたから殴った」。その方がよほど人間らしい。

冷静に暴力を振るう人間なんてこの世にいますかね? そして第三者が「あれはしかたない」などと言う。これも以外に多く、そのことも本当に解せない。権力という愚力の乱用でしかない。それ以外の何ものでもない。

昔、オンが、浪人生(ハタチ超えね)だった時に、死ぬまで忘れられないだろう事件が起きた。



その日は昼からうちで集まりがあり、独身者のほとんどは深夜まで残って酒を飲んでいた。見知った相手ばかりではないのに、めずらしくその席にオンもいた。
酔って泥酔していたわけではないけれど、イヤホンで音楽を聴き、サングラス(あれはなんだったんだ…)をかけ、終始無言ながらご満悦だったオン。ただ、深夜だというのに部屋にもどらず、友人らが持ってきた(おそらく高価な)日本酒を飲むので私は軽くたしなめていた。

私がオンに注意することはめったにないが、したとしても彼は「うぇ~い」と返事をして行動にうつすのが常である。ところがその日は、私の言うことに耳をかさない。
本音を言えば別にいいやと思っていたし、家族や昔なじみとの席であれば気にもならないはずだ。比較的新しい友人らの手前、パフォーマンス的に注意をしたのも否めない。そして私はその場にいた旧知の男友達に「いっしょになって注意してくれ」と助っ人を頼んだ。

その直後だったと思う。
ひとりの男が、いきなりオンの髪を両手で掴んで激しく上下左右に振りまわした。なにが起こったか一瞬ではわからないほどのスピード。大声でなにか言っていたはずだがまるっきり覚えてもいない。たぶんみんなもオンもわからなかったと思う。心底血の気が引いた。あの瞬間を思い出すだけでも震えてしまう。暴力の主は、短大とはいえ教鞭をとる職にいる。当時の私の恋人だった。

髪を掴まれるまで、オンは暴れて騒いだわけでもない。たとえそうだとしても、それがなにか? だが、そもそも声ひとつ発していないのだ。
もちろんやられて黙っているはずはない。それでもオンは、防御したり押し倒しただけで、己のこぶしを振り上げはしなかった。体格差も腕力も、オンのほうがはるかに上である。しかも黒澤浩樹先生の元で格闘技を習っていた。小さな中年など、やろうと思えば一発で倒せたはずだ。けれども決してそうすることはなかった。今にして思えば、オンの方がはるかに立派であった。

あの時の、恋人の暴力の理由が、本当に彼が言うように
「大人が稼いだ金で買ってきたお酒を、浪人生のオンが飲んだ」
だったとしても、私にはまったく納得はできない。その場にいた肯定的だった人たちのことも理解に苦しむ。そして未だに苦しんでいる。

あれからオンは、一切のアルコールを口にしなくなった。



かなり経ってから、この件を弟に話したことがある。恋人とは言わず名前も出さず、ただ男友達が、というテイで。
性格上怒り狂うのはわかっていたけれど、それでも話してしまった。私は誰かに、いっしょに怒ってほしかったのだ。ただその相手が悪かった。

弟からは執拗に、その後何年も名前を訊かれることになる。
「ぜってー許せねぇ。マジ仕返ししないと気がすまねーよ。同じ目にあわせてやる。名前教えろよ、なんで隠すんだよ」
かつてのヤンキー魂がよみがえってしまい逆に怖かった。けれどもそれで救われたのも事実だ。少しは、であるけれど。

元ダンナやオカンには絶対言えない。何年たっても血眼になって、地獄のそこまで探しにいくだろう。同級生らの数人は激怒していたけれど、それは私に対しても同じだった。彼らの多くにはほとんど言っていないのだ。半同棲も、これからすると決めていた再婚も、なによりその恋人とつきあうことを反対されていた。

私は、生粋の、平等な立場での暴力を完全否定はしない。路上のケンカを見るのは好きだし、オンが上級生らと殴り合いをしていたときもそれをニヤニヤと見守っていた母親である。暴力が怖いんじゃない。権力という暴力が心底恐ろしい。それを振りかざす人で、本当に強い人などこの世にいるだろうか。いない。断言する。

たとえそんなつもりがなかったとしても、権力を武器にした暴力は、その立場を利用していることと同じだ。たしかにえらいかもしれない。だが、どんなにえらくても、強力な武器権力を持ってこぶしをあげる人間はクズである。



あの時は私も悪かった。そもそも注意したことからまちがいだったのだ。どうかしてたじゃすまされないくらい心底猛省しているけれど、それが免除されるような善行がこの世にあるとはとても思えない。これからもオンに謝り続けていく。

あのとき、オンの怒りを鎮めることに私は注力した。
「彼(恋人)はオンのこと思ってやったんだから。同じくらいの子もいるし、本当の親になるつもりでやったんだと思う」
そう何度か諭した。それを聞いたときの、オンの気持ちを考えると胸が張り裂けそうになる。私も完全に加害者だった。
自分の子を虐待したも同じ。なぜあの時、暴力を追い出してオンの前に立ちはだからなかったのか。子を守るはずの母が、なぜそんな狂気の行動にでたのか。
 
許されようとは思っていない。むしろ、許してはいけないと思う。あれは本当に私だったのかとさえ思うけれど、まちがいなく私だった。最悪だ。挽回できる余地などない。ただただあの時の自分の判断がそこはかとなく恐ろしい。

私は長年、ネットでもリアルでも、たくさんの恥を晒してきた。けれどもそれらはどれもこれも本気じゃなかったんだろう。あの事件のあとしばらくしておきた人生初の精神的衰弱。そして死のうと思ったことはたしかに恥でみっともないことではある。だが、ぜんぶ私がしたことであり事実は変わらない。今では自虐としてつかえるネタに昇華させてしまった。

昇華もできないこの件こそが私の唯一の恥であり汚点である。今後これ以上の愚行は想像もできない。それほど、この世で1番醜く、最低な行為をしてしまった。べつに開き直ってるわけでもない。

書いて公開したことで、この神聖(私にとっては、ね)なブログを免罪符がわりに使うつもりは毛頭ない。私は軽蔑されるべき人間だという自覚はあるし、そしてこれからも、あの時の私を嫌悪しつづける。