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Weekly Teinou 蜂 WomanにUPした記事内テキスト抜粋Blog

【せ】正論について「男の人はみんな股間から見るでしょう!」

【せ】≪正論≫
(via Beast by Gerwyn Davies | InspireFirst)
 息子のオンが、朝から晩まで読書にハマり、やたらと理屈をこねくりだした時期があった。オカンはクソまじめなので、まともに対抗し、毎回言い負かされてくやしがっていた。わたしはというと肯定も否定もするでもなく、いつもニヤけながら聞いていたと思う。
 彼の話はまったく的を射ていない場合が多い。いわゆる「屁理屈」だ。楽しい。
 わたしはわけのわからない、自分では考えも及ばない話を聞くのが好きだ。オンに限ったことではない。想像をはるかに超える考え、ジョーシキからかけ離れた思想、ちょっと狂った主張を見聞きすることはコーフンする。
 ああ、そういう人もいるんだあ……。と、つくづく感心する。浮世離れしていればしてるほどいい。人間の可能性を見た気になる。

 ズレた考えの持ち主は、たいていが確信に満ちている。自信にあふれている。確固たる意志は、潔くて気持ちがよい。一般には受け入れられそうもない主義を貫いている人は、どんな曲がったものであっても、崇高に見えるときがある。
 よほど非道な意見でないかぎり、自分とちがうからといって反論する気にはまったくなれない。(彼氏やダンナの場合は反論することもあるが)人は顔もちがう。肌の色もちがう。陰毛の濃さもちがうのだから思うこともちがって当然だ。それを自分と同意してもらおうなんて必死になるコトなどそもそも理不尽だと思う。論破してやろうなどという時間などムダ毛の極みだ。
 「アナタのそのツンパから出たハミ毛剃りなさい」
と、強制するのとおんなじだ。
ちがう。ぜんぜんちがう。考え方がちがっていて当然だろう。

 これは、おそらくわたしが小学校のときからはじまったものだと思う。ホームルームの時間に、いつもわたしは1人だけちがう意見を言ったり突飛な提案をして、多数決により全員一致で却下されていた。親友でさえ失笑しながら『反対』の挙手をするのであった。わたしがこのように、人の意見をおもしろがるクセがついたのは、あのときから培ってきた自己防衛なのかもしれない。

 何度も書いているが、へんてこな思考として、わたしは以下を筆頭にあげたい。
 「トイレに行く」と恥ずかしいことを言うくらいならその場で漏らした方がマシ、と言って、車中で平然と漏らした男友だちのエピソードだ。クライアントのお偉いさんと車に乗っていたときのことだと言う。彼はこの話を、しごく当然のように真顔で話すのだった。これは彼の『正論』であり、異論を寄せつけない破壊力もあった。
 元ダンナも少しばかり異星人的発想をしていて、わたしを嫁にするとき、オトンに
「一生しあわせにするなんてことはわからないので言えない」
と言ったそうだ。その通りになった。『正論』である。また、こんなことも言っていた。オトンが
「キミの将来の夢は?」
と聞いたとき、
「んーーーわかんないっすねえ......強いて言えばルパン三世ですかねえ」
このDNAを見事に受け継いでいるのがほかでもない、息子のオンである。
 破壊力といえば、くされ縁のコレステロール伊藤ちゃんも負けてはいない。代表格は、男の第一印象をどこで決めるかという話題になったときのことだろう。
「男のことはみんな股間から見るでしょう!」
と、彼女は平然と言い放った。商店街ですれちがった男性を、片っ端からズボンの上から透視するんだと言っていた。あの時の彼女はすごかった。
「え?みんなそうじゃないの?ちがうの?じゃあどこから見るの?」
 『正しい』という字はキライだが、個人独特の『正論』は、そこはかとなく愉快だ。



本日のオススメ本ですね
伊集院というよりも、阿佐田哲也こと色川武大が好きなので。

 

 こちらのコラムは本家ハチの転載になります。
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