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Weekly Teinou 蜂 WomanにUPした記事内テキスト抜粋Blog

ツァイチエンじゃない方の再見

映画の終盤に差しかかったところで、鮮明に記憶に残っているシーンが突如出てきて驚いた。たまに
「あ、これ観たことあるかも…あるかも…」
と思いながら流すことはあっても、ラスト付近でいきなり
「あーっ観たじゃんこれ!」
となったのは初めてである。


好きな映画を繰り返し観ることは少なくないけれど、伏線を見つけたり、俳優の細かな仕草に目をやったり、ほかに深い意味を見出すのが楽しいのであって、これではあまりにも無意味ではないか。なんなんだ、記憶、って思った。
こちとらヒマなわけではないのである。


そのシーンから先は、自分の不甲斐なさでボーゼンとしてしまいさらに記憶が曖昧になりそうだ。
また観たらどうしよう。


けれども今回、もうひとつ記憶に残るであろうシーンがあったのがせめてもの救いだ。


妻がくだらない世間話を夢中でしている途中で、高齢の夫がさりげなくイヤホンのボリュームを上げるか下げるか(難聴?)して、しれっと彼女の声を遮るのである。あの表情がよかった。
とはいえ終盤どころかこのシーンの次はエンドロールである。
完全なるラスト。
もしまた次回観ちゃったとしたら、生粋のラストまで思い出させないつもりか。そういうサブリミナルの真逆をいく罠を仕掛けた映画なのかコレは。


悔しいので、以前読んだ好きな本を引っ張り出して読み始めた。
自分の意思でもって再読することで、先の屈辱を晴らすのだ。

 

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マンモグラフィーより激しく、胸が押しつぶされそうになる小説。
内容はまったくちがうけど、スパイクジョーンズ監督の「かいじゅうたちのいるところ」にグッときちゃった方なら読んで損はさせません

 

 

 

インフルエンザこわいこわい病

あけました おめでとうございます。

年末のインフルエンザが尾を引いてなかなか過活動できなかったものの、昨日の夜あたりから「おや? 完治したかも」とやたら張り切ってしまい、今日は早起き。

「いや〜早起き、いいな〜Twitterのタイムラインも心なしかさわやかだな〜」などと思って時計を見たら、針は11時を指していた。別に早起きでもなかった。

今年の年賀状です。



エンボスに!


箔押し!


気合いを入れた。
なぜなら広告のひとつでもあるので。
あくまでも個人的ではあるものの、差し障りはないので残った分だけはちみせでお買い上げいただいた方にも配布した。もうないけど。

ついでと言ってはアレだけど、昨年末は、はちみせ用に名刺も新調したのだった。
こちらも気合い入ってるので見てくれ。



角度や天気や照明によって、色が変わるのである。





なので、渡すときにはやたらと振り回すことになり、場合によっては異常者と認識されてしまう恐れもある。



インフルエンザこわい

やっと完治したインフルエンザについて書こうと思う。昨日の深夜、友人の一人が罹患したことをTwitterで知った。しかもわたしとタイプが同じA型だ。(年末年始に会ってはいないので流行っているんだろう)

インフルエンザはわたしが日頃から恐れている感染症である。なぜなら病気ごときで仕事を休みたくないからだ。イヤ待て。これだと勤勉だと思われてしまう。正しくは病気以外で仕事を休みたいから。
勤続20年のうち、インフルエンザとノロウイルスに罹ったときしか病欠で会社を休んでいない。軽い風邪や頭痛などの体調不良はあるし、ほぼ毎日風邪薬を飲んでいるけれど、じっさいのところはもしかしてわたしは健康なのでは……? というか、勤務先で寝ていられるという環境にあったことが大きいのかもしれない。遅刻はした。大いにした。したけれども何が何でも出勤するという、まさに「這ってでも行く」をモットーにしてきたのだった。モットーというか、完全に後付けではあるけれど。

そんな「インフルエンザ怖い病」のわたしが、必然としか思えないシチュエーションでインフルエンザにかかってしまった。



その日は早くから所用を済ませ、外出ついでにいいかげん国保に入らなくっちゃと思い立ち区役所に出向いた。行ってみたら月額6万円も支払わなくてはならないという。思わず「はあ〜? 」と口に出た。しかも大声で。みっともないなと思ったし、言ったからといって減額されるはずがないのは知っている。しかし人間たるもの、ここで大声を出さなければいつ出すという勢いにまかせた。なにしろ6万円といえば、地方の一人暮らし家賃分くらいだ。餓死するぞこれは。国保のために働いてるといっても過言ではない額ではないか。

あまりのショックでカラダが拒否反応を示し、咳を連発して過呼吸のような症状が出る。狼狽してTwitterでは「国保傷心体調不良」とつぶやく始末だった。その日は友人と晩ごはんを食べる約束をしていたけれど、これは少し落ちつかないと……といったん帰宅。1時間後にまた出かけた。

骨董品に囲まれた静かな(かつ美味な)店で、数年前にインフルエンザにかかったときのことを友人に話した。
丸々10日間寝込んだ悪夢のような日々。目が覚めても、朝か夜か何時なのか、現実なのか夢なのか、朦朧としてさっぱりわけがわからない。けれども、インフルエンザは希望があるからマシである。今耐えればやがては完治するという確信がある。本当にインフルエンザにはかかりたくないけれど、でも希望があるので! かかりたくないけども! でも希望が! と熱弁し、 明日は予防接種に行かないと。で、締めた。国保もゲットしたじゃないか。

そして我々は高円寺で、カラオケ客引きのお姉ちゃんにまんまと乗っかって名前も知らないカラオケボックスで2時間ばかり歌い納めたのであった。帰路でツイートしたのが以下。

国保月6万と聞いて過呼吸みたいにずっと息が苦しくなってしまいましたが、カラオケで歌いまくったらだいぶ良くなりました☺️🎤

良くなってない。良くなってないんだよ……。
その日の夜からみるみる悪化。翌日には、老婆のリハビリみたいな動きで病院へなだれ込み、見事「インフルエンザですね」の烙印を押されたのであった。

ごらんのとおり、思えばたくさんの伏線がありこれが男女であれば出会うべくして会った抗えない運命と言わざるを得ない。けれどもインフルエンザは男ではありませんし……。というか人間でもないので……。

ここまで書いたら思い出してヒヘーしてしまった。その後というか間髪開けずにカラオケに行った友人、そして数日後にまんまと息子にも感染して現在に至る。

なにはともあれ、健康ですこやかに過ごしたいものですね〜というのが年が明けての思い。肉体と精神のすこやかさ、それさえあればあとのことはたいていどうでもいいのでは…とさえ思えてくる松の内でありました。

今年もどうぞ。なにとぞ。



オレンジゼリーとあんずジャム、ときどきナタデココ

久々のブログなので、これから書くことをみなさんにも教訓にしてもらいたい。



風呂に入っていたら、脈略なく
「そうだ、さっき買ってきたオレンジゼリーにあんずジャムをつけて食べるときっとおいしいぞ。おいしいにちがいない」
と閃いてしまった。

風呂での閃きは初体験である。
「湯船に浸かっているとアイデアが湧く」と耳にしたことが何度かあるけれど、わたしはまず風呂に入らないし、入ったとしても「一刻も早く出たい」の一心なので、閃く余裕などなかったのだった。なるほど、閃きは余裕から生まれるのかもしれない。

けれども今わたしに余裕があるかというとそうではなかった。なにしろ閃いてしまったので、一刻も早く風呂から上がり、オレンジゼリーにあんずジャムつけて食べなければならない。けっきょくのところ、「一刻も早く出たい」という思いに変わりはなかった。

風呂に入れば身体も温まるであろうなどと思っていたけれど、出たらふつうに寒かった。入浴というものはとことん役立たずである(閃き以外は)。

身体をてきとうに拭いてTシャツとジャージを着て、すぐに冷蔵庫を開いて件のゼリーとあんずジャムを取り出す。スプーンにゼリーとあんずジャムを乗せたら、色がほぼ同じなのでこれといった感動はなかった。口に放り込んでみると、あろうことかオレンジゼリーにナタデココが入っていたらしく、「はい?」と思ってしまったので味がどうのこうのと感じている隙はなかった。驚きは味覚を狂わす。
いてもたってもいられなかったわたしは、ここまでの一連の初体験を立ったまま行なっていたので、「少し落ちつくか……」と思ってイスに座ってテーブルと向き合った。がんばって落ち着いてみたが、やはりオレンジゼリーとあんずジャムは、オレンジゼリーとあんずジャムであり、それ以外の何ものでもない。あとでTwitterに書こう〜と思っていた名ツイート「オレンジゼリーとあんずジャムとのマリアージュ……」といった奇跡は起こらず、もう本当にオレンジゼリーとあんずジャム、ときどきナタデココ。明瞭に三者三様、味はキッパリと互いを拒絶しているのだった。逆にすごい。

結論として、やはり入浴で得るものなどなにもないということがわかった。あと、ジャムとのマリアージュ……などとダサいツイートをしなくて本当によかった。

冷蔵庫が高温になると、Twitter社から安否確認のメールが届く 

 

某日

新入りの冷蔵庫がまったく気まぐれでほとほと困り果てている。

8月の末に我が家にきてからというもの、まともに働いたことがない。
おまえはーーー! 食品を冷やすのが仕事でしょーがーー! と檄を飛ばしたいところだが、おそらく言葉が通じないのでそんなムダなことはしない。

しかもだ、どうせならまったく冷えなければいいのに、思わせぶりに0度近くになったり15度になったりと温度差がハンパないのである。
一度はメーカーが点検にくる予定だったのだけど、前日夜と当日朝にいきなり冷えだしたのでうっかり「様子を見る」ことにしてしまったのだった。

その後も冷蔵庫は順調に温度差ライフを遂行しているので、今度こそはとメーカーに再度連絡をしたけれど、どうやら繁忙期らしく決戦まであと一週間もある。



この一ヶ月のあいだ、廃棄したタコは3つ、生ハムもまだまだ賞味期限があるにもかかわらず、見事な土色に近づいてきたため錯乱して捨てた。もはやナマモノなど恐ろしくて買えないじゃないか。でもタコだけは買っている。

こうなったら点検だ修理だとナメたマネにでてもらっては困る、どう考えても初期不良なので交換を願いでた。
敵はおそらく百戦錬磨なのだろう、「まずは点検からでないと話が進まない、どうしても交換したいのなら購入店に問い合わせてはいかが? でも80パーくらいはムリだと思うわよ」的なメールがきた。とにかく解せない。釈然としないのだけど、もはやわたしにできることは点検日を待つこと。これしかない。まさか泣き寝入りするのかもな……高額なMacとか、車とか、物件とかでなくてよかった……と思ったけど、いや、よかったじゃあないんだよ。とにかく毎日混乱している。

点検当日、0度になろうが氷点下になろうが、なにがなんでも交換か修理をしてもらうために証拠記録をつけ始めた。いちいちスマホで温度計の写真まで撮っている周到さだ。

だいたい朝は0度近く、帰宅後数回でも開閉すると、一気に10度超えたりする。そもそもうちは料理をしないし、ほとんど家にいないのだからふつうの家庭だったらさぞかし高温になるんだろうとお察しする。同志たちと被害者の会を発起してこの苦しみを分かち合いたい……。

それにしても、最低でもあと一週間、わたしはこの容姿だけはイケてる冷蔵庫と対峙しなければならない。わたしが苦手とする細心の注意を払いながら冷蔵庫に関わっていくのはかなりの屈辱だ。精神がボロボロになっていく。

冷気が逃げて温度が上昇したらまたタコが腐敗してしまうので、腕がやっと1本入るくらいしかドアを開けない。温度計を確認するときなどは、やっと目視できるくらい、コソ泥のようにそーっと開けて盗み見てからしずかに閉める。

わたしは人に気を使わないタチだけど、まさかここまで冷蔵庫の機嫌をとる日がこようとは思わなかった。

こんなに冷蔵庫の顔色を伺っているにも関わらず、昨日はとうとう18度になり我が家のギネスを記録した。
もはや棚……とはよく言ってくれた。もはや棚だし、もはや箱だし、わたしの神経を消耗させる苛立たせボックスである。他人が宇宙旅行を企画している令和の今、まさか冷えない冷蔵庫にここまで苦しめられるとは……。



あまりに翻弄されつづけて、それでなくても怪しい頭がさらにおかしくなっていったのかもしれない。Twitter社から心配のメールが送られてきた。

そうだった。
ヤツが到着して10日後にはかなり疲弊して
「死んだほうがマシ。冷蔵庫に頭突っ込んで死にたい」
などとツイートしたんだった。

それにしても、この世には親切な方がいるものである。親切な人、都市伝説じゃなかった。
けれどもどうせなら、命の心配より冷蔵庫を直してもらいたい。

Twitter社からきたメールは、こんなテキストで〆られていた。

あなたには力になってくれる人がいます。
ひとりで悩まないでください。 
ぜひご相談ください。

いいのかな……。
ありがたいですね。

照明の傷心

某日

デイリーポータルの面々が「にがおえバイキング」をやっているというのでトーキョーピクセルギャラリーに行った。あまり絵を描く印象のない西村さんが参加するのを知って
「西村さんって絵を描くんだっけ……?」
と藤原に訊いたら、その人のイメージに合った市章を作るのである、と返ってきた。それは面白そうだぞ……と狙っていたのだった。

店の奥に、机がいくつかあって、そこに先生(にがおえを描いてもらうので先生なのである)がいる。

学校の机のような、小さなスペースの上で、西村さんはスケッチブックではなくノートを広げて「土屋」の文字を分解していく。これは下書きというかラフの段階で、帰宅後デザイナーの奥さんに仕上げてもらうとのことだった。

市章はだいたい円形なのだ。フリーハンドでさくっとカーブをつけると、西村さんは秘密兵器みたいにコンパスを取り出した。たしかうちの息子も持っていたはずだけど、自分の小学校の頃のことを思い出す。
現代のコンパスはなんだかちょっとスタイリッシュでかっこよくなっていたけどコンパスはコンパスだった。いろんなことが進化して消えているのに、この鋭利な文房具はまだある。学校崩壊やイジメの時代に、この凶器がまだ残っている。

北村ヂンくんもいたので、前々から気になっていた贋作にがおえ F(ファンタジー)先生風も描いてもらうことにした。これも顔面をiPadでパシャリと撮って、家で完成させてメールで送ってもらう。コンパスとちがって、こういうことは進化している。
そういえば上野の名物だった似顔絵のおじさんたちは、いまどうしてるんだろう。階段に座っていつも暇そうにしていた。本職だったのか副職だったのか……もしかしたらただの趣味だった可能性もある。

さて、西村さんから市章が送られてきた。
土屋ではなく「はちみせ」に変えてもらったのだった。



真ん中が8でまわりにセが3つ。
申しわけないことに、何種類か送ってもらった。西村さんも奥さんもありがとうございます。マンホールみたいなこれが一番気に入った。



贋作にがおえ F(ファンタジー)先生風
かわいく描いてくれと言ったら、「まあだいたいかわいくなります」とのことだった。
リアルで髪の毛がピンクだと、もう何がいいのか悪いのかわけが分からなくなっているけども、イラストにするとすこぶるかわいい。
そしてなによりキャップとTシャツがかわいい。
はちみせでまだ売ってますからみんな買いましょう。

そういえば西村さんが
「わざわざ来てくれたんですか」
と言ったので
「ついでがあったから……」
と即答してしまったのを思い出した。たしかについでがあったけど、でも市章も作ってもらいたかったんです、ついでとか言わなければよかった。わたしの日常は言わなければよかったことが多すぎる。そして「あ」と思ったとき、深沢七郎の「言わなければよかったのに日記」を思い出して、まあいっか……と開きなおる。




某日

いいかげん照明買い換えようと思っていた時期に、頭をぶつけて照明カバーが落ちてきた。これがどうやって落ちたのかさっぱりわからない。どう考えても落ちるような仕組みじゃないのだ。

カバーはカバーだけれど、天井から吊るしているリードを外さない限り、カンタンに落ちるような構造ではないのである。

落ちるのもカンタンではないのだから、取り付けるのももちろんカンタンではない。
ひとりでやってみて断念。息子にやらせてみて断念。来客があればみんなに試してもらったけれど、けっきょく誰も取り付けられなかった。
本当にどうやって落ちたんだろう。知恵の輪にでもなっているのか。

電化製品やMACは悪口を言うと急にがんばりを見せたりするけれど、照明は打たれ弱いのかもしれない。

ところでけっきょく新しい照明はまだ届いてないのでうちは裸電球です。

増税前にと思って目当ての照明を買ったのだけれど、これもまた奇々怪界なシロモノで、リード部分が1m70cmもあると商品ページに書いてある。図書館か体育館にでも吊るすつもりだろうか。どう考えてみても通常の住宅では床につきそうな勢いだ。というかつくかもしれない。気がついてよかった。リードカットを申し出たら、対応してくれるとのことだった。

そのことをランチのときに話したら、おもしろいから床につく照明の写真を撮ってくれと一同に言われた。それはたしかに絵になるな……と思ったけれど、いくらなんでもそんなサービス精神は持ち合わせてない。
あぶないところだった。

ーーー

あとはちみせ新作、昨日出たんですけど、SOLD OUTになりました。
ありがとうございます。

はちみせ集大成バインダーと


クリアがすぎる石マルチケースでした



また新たな新作、懲りもせず来週に出ますので
よろしくおねがいします。

はちみせ

得もしない 損でもない

わたしの定位置から手の届くところにテレビ台があり、そこに3つの引きだしがある。
ひとつは領収書入れとなぜか風邪薬が入っている。
風邪薬のみで、そのほかの薬やサプリはない。それらはそのとなりの引きだしだ。
わたしは風邪薬ジャンキーだし、領収書も毎日バサッと放り込むのでこの引きだしが一番活発なのだった。活発な引きだし。引きだし冥利につきるだろう。

冥利につきる引きだしには、領収書と一緒に請求書も入れてしまうことがある。数字が書いてある書類だから、ということで、安易に入れてしまう。その日は何枚か取り出して、必要な請求書を探していた。
少し厚みのある銀行の封筒がでてきて、もしやと思ったらお札が入っていた。会社からもらった給料袋だ。ほとんどキャッシュレスで過ごしているので、受け取ったその日にATMに行っていくらか収めるけども、残りをなにかに使おうと思ってきっと入れておいたのだ。
確認したら12万入っていた。以前、同じシチュエーションで給料袋を見つけた時は6万円だった。この計算式で行くと、つぎは18万円。いや、24万円かもしれない。
今回も得したし、次はもっと楽しみだな……って思ったけれど、友人に話したら
「それって得はしてないよね。損しなかったってだけで」
と言われて我に返った。



ところで、はちみせ新作続々でてます



はちみせ

徹夜記念日

毎年ではないけれど、この日がくると思い出すのは夏休みの宿題だ。
はっきりと覚えているのは小二の夏。今日中にすべてやりきれとオカンの号令がでて、本当に泣きながら宿題をやった。最後の読書感想文のころには朝になっていた。一冊読めばいいだろうと思っていたら、なんと3冊のノルマがある。オカンの目を盗んで、「あらすじ」と書いてあるところを抜粋してまとめて書いたらそれらしくなった。宿題をやり遂げたことよりも、憎きオカンをだませたことがなによりうれしく晴れやかだった。タイトルは忘れてしまったけど、赤い表紙をしていた。わたしはけっきょく、その本を読破することはなかった。

わたしはバカだがある意味においてはかしこいので、「夏休み中はほったらかしにしておいて、最後の最後に宿題を見せろだなんて、オカン勝手すぎる」というようなことを思っていたし今でも思う。自分の子供にはこんな勝手なことはしないぞ……と誓ってその通りに子育てをしたけれど、我が息子はわたしが「やんなくていいじゃん?」と言っても、なにがなんでも期間内に宿題をやり遂げるクソマジメな性格だった。

8月31日。あの日のわたしははじめて徹夜をしたことになる。
熱はないのにあついカラダ、今にも落ちてきそうなまぶた、へんな汗もかいているような気分。眠いけど寝てはいけないつらさを味わったのもあれが最初だろう。だからこの日はわたしの徹夜記念日だ。

全国の小学生諸君! と、大先輩としてメッセージを送ろうと思ったけれど、明日は日曜だ。それはラッキーでしたね、全国の小学生諸君。