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Weekly Teinou 蜂 WomanにUPした記事内テキスト抜粋Blog

【へ】偏平足 なんにもしてないのに、なんにもしてないのに~

【へ】偏平足 ヘンペイソク(Wikipedia

「今度のBlogのお題は『へ』なんだけど、なにがいいかな。『偏屈』『変人』あたりは書きやすすぎてつまんないから名詞にしたいんだよね」
と言ったら、
「そうだね、『偏屈』『変人』はそのものだからね」
と返されて絶句した土屋遊です。こんにちは。生粋の偏屈や変人さんたちにとんだ無礼を......。
ちなみに、一児の母である高瀬克子さんは
「『へ』でいいじゃん、『屁』で」
と言っていました。

……ということで、そこから出た『偏平足』を今日のお題にします。

rosettes:

Miu Miu Fall/Winter 09

偏平足といえば、同級生のTを真っ先に思い出す。
俊足だったTだが、自分の偏平足をたいそう気にしていた。足のウラの、誰にも見えないそんなところにコンプレックスを持つTがまったく解せなかったし、滑稽でもあった。

そして迎えた小学校最後の運動会である。
赤、白、互角の戦いの中、みんなが一丸となって燃える騎馬戦で佳境に入った。
裸足になって準備のために並んでいる時、わたしは対戦相手である赤組のTに向かってこう言った。
「T、足のウラ、みせて」
突然、Tが泣き出したのである。
え! ええーーーっ!?

裸足で校庭を歩けば、とうぜん偏平足であるTの足のウラは土で真っ黒になる。それを見越して、戦意喪失させるつもりではあったがまさか泣くとは……! 作戦成功にもほどがあるでしょう!
「Tなんにもしてないのに、Tなんにもしてないのに、アソビのいじわる~」
ヒックヒック泣きながら、誰にともなく訴えるT。
あ~あ、泣かせちゃったー。というみんなの冷たい視線。
数人に取り囲まれ、なだめられるTを横目にわたしはシカトをきめこんだ。
こんなことに翻弄されていては、リレーの次に楽しみにしていた騎馬戦を楽しめないっ!

だが、その後の騎馬戦のことは
「イケーーーッ!」
と、自分を鼓舞するように叫んだこと以外、まったく覚えていない。
『騎馬戦』や『偏平足』の単語を耳にしたとき、まっさきに思い浮かぶのは
「Tなんにもしてないのに」
という、あのセリフなのだった。

泣き虫Tは、学生時代、わたしたちの通った塾の講師のバイトをし、今では立派に小学校の先生をしている。思えば、『偏平足』イコールTという方程式がわたしの脳内にインプットされてしまったことは多少気の毒でもある。どちらにしても、何事もなかったかのようにケロッと仲直りしたはずだったが、結局わたしは、あの日のことに関して、いまだに「ごめん」と言えないのだ。まあ一生言わないだろう。

余談だが、「なんにもしてない」といえば、浮かぶ人がもう一人。
「わたしは何もしていないのに、子供を授かったのです!」
と、血気盛ん・精力全開な中2に向かってシャーシャーと言い放った担任宮坂は、指一本触れたことないダンナとの間に、子どもができたとホームルームで大々的に発表した。
わたしを見れば宮坂は
『キミを信じよう』
などという意味不明なセリフを口癖のように言っていて、ドラマ仕立てのあの眼光を見て吹きださない術はとっくに習得していたけれど、この処女懐胎には吹き出した。しかも相手は保健体育の教師である。おい、なに教えてんだ。
本当に彼女がわたしを信じていたかどうかは定かではないし、限りなくどうでもいい話だけれど、信じている相手に向かって、なんども「信じよう」と言うのは逆効果だということだけは学んだ。
あのセリフがよほど気に入っていたのか、宮坂はわたしの色紙にも同じ文句を書いていた。
どっかいっちゃったな~あれ。いまだに「なんにも」してないのかな~。





本日の、【へ】に関するオススメ本。
読みやすくってタメになる。(東京情報)

 

こちらのコラムは本家ハチの転載になります。
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【ね】寝る ヤなことあったら寝てしまえっ!

【ね】寝る

寝ることは得意だが、起きることは苦手だ。

(via This Puppy And Baby Are The Most Adorable Nap Time Pals)

なんの防衛本能かしらないけれども、イヤなことがあると寝てしまうという妙な奇病(クセ)をわたしは持っている。
あっ! やっぱりわたしはイヤなことをしたり聞いたりすると眠っちゃうんだ!
と確信したのは、息子のオンに説教をしていたときのことだった。
差し向かいで晩ごはんを食べながら、なにやら滔々と話しつつも、心中では、イヤだな〜こんな説教したくないな〜と思っていた。そのうちにカクンと寝てしまった。寝オチにもほどがある。
起きたのは深夜2時くらい。
右手にお茶碗、左手にお箸を持ったまま、座位で眠りこけていた自分に、一瞬なにが起こったのかわからないほどだった。
テーブルの上には食べかけの干からびた料理が並んでいて、肝心のオンはもう布団をかぶっていた。
え。え? マジー! ラッキー! と思ったにちがいない。わたしを起こさないよう、音を立てずに細心の注意をはらいつつ布団を持ち出したであろう彼の姿を想像すると、おかしくておかしくて笑いが止まらなかった。
今考えてみれば、食事のさなかに目の前の人間がトートツに寝てしまったら、気を失ったのではないかと心配するのがフツーだろうに、それよりも説教がいきなり止んだことのよろこびで、彼はそれどころではなかったのだと思う。

それ以前にも、オカンの長〜い話を聞いていると、すぐに寝てしまう自分が不思議でならなかった。居眠り病(ナルコレプシー)かと疑ったりもしたけれど、どちらかというと良いようにとっていて、子宮の中にいたころの郷愁がそうさせるのではないかと思っていた。そばにいれば叩き起こされるのだが、電話ともなると当分のあいだ、オカンは気付かずに話しまくっていた。相槌など打たなくても、自分の話を聞いてくれさえすればいいのである。そのうち大声で
「聞いてるのっ!? 寝てるんじゃないでしょうね!」
と叫ばれるので、ハッと目覚めるのだが、一度だけ受話器をソファの下に落としたまま熟睡していたことがある。そのときは、わたしが倒れたと思ったらしく、うちの隣宅に電話をして、
「アソビが電話の途中で倒れたから見てきてほしい」
と大騒ぎになった。隣人と、向かいの住人が血相を変えて
「土屋さんっ!土屋さんっ!」
と起こしにきたときも、何が起こったのか飲み込むのに時間がかかった。
けっきょくオカンの長い話を聞きたくないという逃避現象であって、子宮回帰願望でもなんでもなかった。野生の本能だとしたらあまりにも危機管理ができていない。生きるための知恵とでもいうべきか。うん、それに近い。

昼寝 (by asobitsuchiya)
佐渡の小料理屋の前にて

アルコールを飲むと、バスの停留所だろうが公園のベンチであろうが寝てしまう。放浪時代はそれこそいろんな場所で寝た。それなりに『寝』に関するエピソードはあるのだが、起きた時に一番印象に残っているのは高校時代のことだ。
授業中、どうしても横になって寝たくなり、後ろの方へ行き、学生鞄を枕にして完全な就寝体制をとっていたときのことだった。教室内のざわめきで目覚めると、真っ黒な巨人が、わたしをまたいで仁王立ちになっていた。あの時の驚きたるや。夢ではないかと疑ったほどだ。
巨人は家庭科の先生だった。逆光で影になり、一瞬真っ黒に見えていただけのことだったのだが、友人らの話によると、先生は握ったこぶしを震えさせつつ、わたしの寝顔をしばらくのあいだ見ていたらしい。わたしは交通事故にあった人のように、クラスメートたちに取り囲まれながら目を覚まし、巨人を目撃したのだった。
先生にはほかの件でも怒りをかい、夏休み中にオカンが呼びだされたことがあるのだが、新学期になってみたら彼女は心臓発作で亡くなっていた。
「教師生活を長くやってきましたが、こんなことは前代未聞です! 寿命が縮まりました!」
の言葉がわたしに重くのしかかった……と思うでしょうが、実はそうでもなく、ああ~死んじゃったのか~くらいの思いしかなかったです。友人らからは『殺人事件完全犯罪』と言われている。若さってこういうもんなのかな。あの時はすみませんでした。渡辺先生、どうか成仏して下さいね。わたしは今も、たくさんのところで寝ています。


本日のオススメ本
眠り病(ナルコレプシー)を患っていた色川先生の絶筆となった小説
 
こちらのコラムは本家ハチの転載になります。
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【に】夜のにおいがする

【に】におい

 夜の匂いがある。アダルトチックなものではなくて、本当に『夜』の匂いだ。夜道ではない。”夜道を歩いて”うちに来た人だけが放つ独特な匂い。そんなときにはいつも
「あ、夜の匂いがする」
と言って、相手はハテナという顔をする。あの匂いは、誰であっても同じ。もしかしたら、冬だけに限られる、冷たい空気の匂いかもしれない。でも昼間はしないから、やっぱり夜の匂いなんだろう。あれを嗅ぐと、どんなにケンカをしていた相手でもつい許せてしまうような気がする。夜道をごくろうさま、と、愛おしい気持ちになってしまう。何らかの作用があるのかもしれない。『夜のにおい』香水でないかな。いや、やらしい意味じゃなくて。つかなんなの、ベッド専用香水とかって。

I’m Sad.Everything is over.
GINZAは二度と買わないし読まない。視界にも入れたくない。
銀座にも行きたくない。戸越銀座にもだ。
(via Romulo Sans “Crushed” At White Box Gallery | Trendland: Fashion Blog & Trend Magazine)

 男のつける匂いはまったく悪臭だと思う。頭が痛くなるような、きらいな匂いが多いうえに、コロンを付けるという行為そのものがおぞましい。彼の家の洗面台に、たくさんのガラスの瓶が並んでいたのを見た時は、心底辟易した。あーヤダヤダ。あれはいったいなんのつもりだろう。臭いのか、臭いからコロンをつけて、なんとかごまかそうとしているのか。体臭を消すために用いる香水は、本来の付け方として正しいのかもしれないが、どっちにしてもやめていただきたい。わたしはまだ腋臭のほうがマシだと思える。

 一時は男が変わるたびに、つける香水を変えていた。なんとなく、自分のつける匂いが、以前の男を彷彿とさせてしまうのが彼氏に少しだけ申し訳ないような、うしろめたいような、そんな気がしていた。だけどもそんなに好きな匂いに巡り合うわけでもなく、最近ではもっぱら同じものをつけている。たまに
「あ、アソビの匂い」
って言われる時がある。オカンにはいつも、ケダモノのにおいがするー! と言われているので、いい匂いが定着するのはちょっとだけうれしい。

 友人でもあり同僚でもあるKは、とても匂いに敏感で、わたしが煙草を吸って事務所に戻ったときなどは、クサイクサイ! とまるで害虫でも追い払うように、ファブリーズを吹きつけてきていた。髪の毛がにおうと言われ、給湯室で洗髪したこともある。もちろんドライヤーなんてないから、タオルを頭に巻いたまま仕事をしていたが、なんだったんだろ、あれは。今考えると異様な光景だ。彼女は社長にも、「男くさい」から席を代わってくれと申し出たこともあった。とにかく万事がポジティブである社長は、くさいと言われたことよりも、男と言われたことに「男扱いされたー」と、嬉々として席替えを承認していた。ちがうだろ、そこ。

 好きな匂いっていったいなんだろう。前述の『夜のにおい』は好きというにはすこし切なすぎる。オカンの服を着ると、彼女のにおいがするけれど、べつに好きではない。夜道の住宅街を散歩していてどこからともなく漂ってくる、どこかの家の晩ごはんの匂い。あれは好きだ。あ、肉じゃがだ、とか、カレーだ、とか、さんまの焼いた匂いだとか、話しながら歩くのも楽しい。銭湯の匂いも好き。あれはカビの匂いと教えられてとても残念な思いをしたけれど、銭湯はきらいなのに銭湯の匂いは好き。もしかしたら一番好きかもしれない。

(via Kostis Fokas’ Sexually-Charged And Inventive Photographs (NSFW) - Beautiful/Decay Artist & Design)

 最近は香水を身につけている人が少なくなった気がする。バブルの時代は、猫も杓子もつけていたのではなかったか。わたしは銀座で働いていたので、あの頃は街中がいろんな匂いに包まれていたんだろうなあー。あ、『匂い』と『包む』って漢字が似てる。


本日のオススメ本 
先に映画を観てしまったのが悔やまれた一冊。小説からリアルににおってくる。

 

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【な】なんにも! なんにもしないからっ!

【な】なんにもしないからっ!

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 「何もしないから! なんにもしないから!」
と男に言われて家やホテルにノコノコ付いて行き、なんにもされなかったためしはないだろう。そこでナニゴトかされそうになり、
 「なんにもしないって言ったクセにーっ!」
と、そこらへんにあるものをやたらめったらブン投げて、泣きじゃくりつつ帰るなんてシーンがこの世に存在するのかとさえ思う。むしろそこで、なんにもされなかったら頭にくるのが本来女性のしかるべき姿じゃないだろーか。
 しかしこれを全うした男がいた。
 「なんにもしないからー。髪なでたりして寝るだけだから」
と言われて、当時マッシュルームカットだった髪の毛を延々となでられるだけで一晩を明かした屈辱的な経験がある。元来、頭をなでられるのは大好きなので、そこまではよかったが、いつまでたってもなでている。
 ーーん?んんーー? と思いながらも、いつ手を出してくるのか見計らっていたというのに、あろうことか、催眠術にかかったようについ寝入ってしまったのだった。気づいたら朝。マジか。髪フェチか。
 それからというもの、ここぞという男が同じようなことを言ってきたら、
「なんにもしないなら行かなーい」
と言うようにしている。人生は学びの連続だ。ムダな駆け引きはいらない。(最近ではそんなことめったにないけれども!)

 異なるバージョンに「なにもないけど」というセリフもある。
 「なにもないけど遊びに来て」
と言われて、何もなかったためしがないのが世の常だ。テーブルには、手の込んだ料理が並んでいることが多い。だがこの場合は、本当に何もなかったとしても立腹するようなものでもないだろう。わたしが人をうちに招く時には
黒豆茶と紅茶とコーヒー以外なにもないからね」
と必ず前置きしておく。

 日本語には不可解な、多様性に満ちたコトバがたくさんあるけれども、『なに』というのもその筆頭かもしれない。
 「なに?」は、自然な問いかけにもなるし、イントネーションを変え、凄味を加えただけで、一触即発にもなる。
 「ナニしようか」も、発音によってかなり熱量が変わってくる。例えればこのナニが、針と同じ発音であったら、さてどうしようか何しましょうか、ということになるし、カニと同じであれば、とんでもない卑猥な言葉として相手に伝わってしまう。(関東圏に限るのかは知らない)
 えーっと、混乱してきた。わたしは何が言いたかったんだろう。たぶん、一晩中頭をなでるのは良くない! ほどほどにして次のステップにいきましょーよ! ということだと思います。一生根に持たれますから。


本日のオススメ本

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【ち】《 遅刻 》「わたし、夢を見ているのかしら」

【ち】《 遅刻 》
 小学校の時から遅刻魔だった。
 月曜は、朝礼のため校庭に整列している生徒たちの前を堂々と通り、校長先生を唖然とさせていたそうだが、そんな光景も高学年になるころには恒例になった。



 2009年の初夏、一度だけ、時間通りに待ち合わせ場所に行ったことがある。その時のコレステロール伊藤の反応が尋常ではなかった。
 みなが集合して、電車に乗り込んでからの30分間、ずーっとその件(私が時間を守った件)について
「わたし、夢を見ているのかしら」
と何度も言う。あげくの果てには逆ギレのように
「なんか(アソビの)顔が変わったよねー」
「老けた(一ヶ月くらい会ってないだけで)」
「髪の質も悪いんじゃないの」
「ふつーになった」
「更年期じゃないかしら」
と、とにかく遅刻をしなかった私のことが気に入らない、許せない、断じてけしからん様子なのだ。ふだん一番文句を言うのも彼女だ。どっちにしても言われるのか!?
 そのしつこさに閉口しながらも、彼女に痛々しさと哀れみを感じ
「ああもうわかったよ、遅刻すればいいんだろう。遅刻すれば」
と投げやりな気持ちになると同時に、わたしが遅れないことがそんなに珍しいことなのか?もしかしてセーフ初体験なのか?と必死に過去を振り返ったが、ついに思い出すことはなかった。
 当日は友人Mの納骨の日だった。
 わたしは、今後一生、友人を落胆させないために遅刻をする、しまくることをMの墓前で誓ったのだった。

 対抗するわけではないが、わたしより上をいく遅刻魔、それが息子のオンだ。
 小学校の時は起床5時でいっさい遅刻をしなかった。親バカながら
「この子はわたしに似ないでえらいなー」
と思っていたが、中学の時に遅刻魔としての頭角を現した。
 何度起こそうと起きない。やっと起きたと思ったら、のんびりと朝食を食べ、シャワーを浴び、いってきまあすと出ていくのだった。高校では、そのうえにコンビニでのうのうと立ち読みなどして登校するものだから、とうとう『あと1回遅刻すれば退学』というところまできてしまった。わたしたち身内と友人らで、もうこうなったら校門前で寝袋宿泊するしかないというとこまで考えたので、退学にならなかったのは、奇跡と言っても過言ではないだろう。
 わたしはオンが、『慌てる・焦る・急ぐ』ところを見たことがない。今では遅刻どころか、来るか来ないかさえわからないので、誰もオンのことはアテにしなくなっている。あいかわらず周囲に甘やかされてばかりだ。こんなことでこの世を渡っていけるのか心配な面もある。
 アテにされないことはまったくさびしいことだが、本人はいたって楽に生きている。そのうち痛い目に合うといいが、親が親だけにきびしく叱れないところがつらいところだ。彼もまた、いつかまともな時間に登場した時、友だちに驚愕され、執拗に文句を言われることだろう。ザマーミロ!
 「わたし、夢を見ているのかしら」
 「わたし、夢を見ているのかしら」
 「わたし、夢を見ているのかしら」
 ほんと、しつこかったなーアレは。


本日のオススメ本ですね。大人にもこどもにも。

【た】あんたタメ? 私タメ。

【た】≪タメ口≫


 今日は『宝』をお題にして
「わたしの宝物は友だちです!」
と書こうと思ったのだが、過去の記事で宝についてはガッツリ言及していた。
 しかも
わたしに宝物なんてない
とまで書いてある。
 つーわけで、わたしの宝物はナシッ!ということで、別の話題に切りかえた。『タメ口(ぐち)』です。タメ口でいきます。

(via Cara Delevingne Defends Twerking In A Very Cara Delevingne Way)

 敬語が苦手である。無意識にタメ口をきいてしまう。
 元々「ため」は、博打用語で「ぞろ目(同目)」をさし、対等という意味だというが、わたしの場合、初対面だろうが年上だろうがおかまいなしだ。失礼なヤツだと思われることも多々あるだろうし、敵もどんどん増殖していることだろう。
 もちろん敬語を使うこともある。それも無意識だ。(あ、わたし、敬語話してる)と途中でハッとして、路地裏のノラ猫のように、相手に対して警戒心を持っていることに気付く。
 わたしの横柄な態度を、おもしろがってマネする友だちもいる。客観的に自分をみると、たしかに態度がでかい。わースゲーなー!と、自分でもあきれ果てる。しかしこれを直そうとすれば、きっと萎縮してしまう。なにも話せなくなってしまう。話しちゃいけないいけないと思い、窒息してしまうかもしれない。

 リアルでなくてもそうだ。
 先日、写真家のいくしゅんが、わたしとはじめて接点を持ったときの話を友だちにしていた。
 彼が、展示会でのトークイベントをTwitter上で告知したところ、
「土曜日にしてっ!」
とわたしがいきなりリプライ(返事)を飛ばしたのが最初だったと言う。面識のない相手に、タメ口どころか命令口調である。幸い彼はわたしのことを知っていたし、彼は彼で頭がそうとういっちゃってるので問題はなかったようだが、これが完全に見知らぬ相手だったらいったいどう思われたことだろう。不躾な輩だと、憤慨されてもまったくおかしくはない。
 わたしはこのタメ口によって、相手を不快にさせたことはあったかもしれないが、不快な思いをしたことがない。トラウマがないので、まだこうしてタメ口路線を疾走しているのかもしれない。

 逆に、タメ口で話されることはどんな人であれ歓迎する。むしろ、ずっと敬語で話されると、ジリジリと精神的に後ずさりしてしまうような気がする。
 友人の子が、小さい頃から知っているのに、大学生になっていきなりわたしに敬語を使いだしたことがあり、あれには淋しい思いをした。
「お前なー、お前のチンチン見てるんだぞ、わたしは!」
と言いたくなった。ただ、これは彼の一時的なマイブームだったようで、またタメ口に戻っている。青春ってすばらしいな。

 もちろんタメ口を推奨する気はない。TPOをわきまえた会話をすることは大切なことなんだろう。だが、わたしには、誰でもできればタメ口で話してほしいと思っているから、自分もタメ口で話し続けているのかもしれない。気付かないうちに、必死な努力をしているということもできる。えーー!努力の賜物なの?これ。
 でもってこの涙ぐましい努力によってきらわれることはまったくかまわないのである。むしろ、
「タメ口で話すなど無礼千万!」
とご立腹なさるお人柄の方には、徹底的にきらわれたいと思う。でもってそれを口頭で伝えてもらえるとなおうれし~な~。だって、面白いじゃないですかー。ご立腹者って。そしたら
「あははー!怒ってるぅー!」
と、指さして爆笑したい。


※このタメグチについては、先日話題になり、私が先輩後輩のない部活動(個人競技でしかも先輩より記録がよい)を推して実行してきたことが大きいのではないか? という話も出たのでまた改めて考えます。

ヒサミチさんとこで知った、本日のオススメ本ですね。

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【そ】掃除好きの母親に生まれた子は……

【そ】掃除
despicablealexis:Our creation by muriloVM 


 わたしは掃除がきらいだ。日課としてホコリをとったり、脱いだものを洗濯カゴに入れたりということはできるのだが、定期的に窓を拭く、バスルームを念入りに洗う、さらに言えば、身体をていねいに洗うことさえごく稀だ。
 きちんと掃除をすることが、ひどく苦手である。
「でもいつも片付いているじゃない」
と言われることもたまにはあるけれど、それは忍法的に言えば目くらましにすぎない。引き出しや押し入れの中は荒れ放題。メイクをして、たとえいい服を着ていても、お風呂がキライ。それと同じで中身がグチャグチャなことは、よほど親しい人でないと気付かないのだろう。残念ながら、わたしの頭がからっぽだということも、このことに比例している気がする。 
 だからというわけではないだろうが、汚い部屋がすきだ。いわゆる汚部屋に行くと、安心して長居してしまう。もうわたしの場所〜と、するっと入り込める。ああこれが、人間という生き物の住処だなーと思う。

 考えてみれば、本気で好きになってつきあった男子の部屋は一様に汚かった。足の踏み場はベッドの上だけ、という、いかにも発展しやすいシチュエーションが多かった。あまりにもキレイな部屋に住んでいる男の子にどうしても耐えられなくなって、それを理由に別れたことさえある。
 汚い部屋の持ち主は、細かいことを気にしないだろうし、裏表のない性質のような気もする。わたしは他人に対し、正面からぶつかっていく性格だったから、このほうが気が楽、ということなんだろう。 

 わたしはオトンの血を引いてるのだろうか。彼の部屋は雑然としている。ベッドとテーブルの間には何冊もの本が乱雑に積まれていて、そこには5つくらいの枕と複数の老眼鏡が落ちている。買物だけしてスーパーの袋から出してもいない謎の商品もたくさんある。そのうえに醤油やソースなどがこぼれて染み付いていることもあるそうだが、そんなオトンにオカンは降参している。あのオカンが! あきらめることで、精神の安定をはかっているのだという。長年の知恵、生きるための術なんだろう。 


(via Science World: Tissue | Ads of the World™)

 わたしの場合、オカンの反面教師ということもあるかもしれない。今はかなり緩和されたものの、以前は雑巾を一日中手放さなかったオカン。キレイ好きは度を超していた。
 玄関はいつも拭いていたから、土足であがってはいけなかった。玄関なのに、土禁なのである。ゴミ箱にゴミを捨ててもいけないという意味不明なルールもあった。裏庭の大きなゴミ箱に捨てろと言う。わけがわからない。帰れば玄関の外でクツを脱ぎ、ゲタ箱に入れ、くつ下を脱いで大急ぎでバスルームで足を洗うことを義務づけられていた。キツネと狸のだまし合いのように、わたしは大げさにシャワーの音をだし、洗ったフリまでしてでてくるのだが、そこにまたバスマットで足を拭いてはいけないという難関がある。風呂場でキレイに拭いてから、バスマットにのるように義務づけられていた。生活雑貨たちの利用されない心情を思うといたたまれない。なんのために生まれてきたんだろう。そう哲学することはなかったか。  いたたまれないのは彼ら雑貨だけではない。元来おおざっぱなわたしは生きた心地がせず、家に帰るのが嫌でしかたなかった。落ち着かないのだ。家なのに! あのころのオカンは半分狂人だったのだろう。子どもにとっては大変な迷惑である。おかげで一歩外に出れば、わたしの天下だ。外出ばかりして、家には寝に帰るだけ、というクセがついてしまった。

 こうして挙げてみると、わたしの汚いもの好きは、やはりオカンを警戒しすぎた影響が強いのではないかと思う。駐車場のコンクリの上で寝ることも平気だし、浮浪者と一緒にごはんを共にしたことも一度や二度ではない。服の袖口に食べ物の汁がついてもそのままにしてしまうし、手を洗えば着ている服かポケットの中で拭いてしまう。男についての好みも、「寝ぐせ」を1番にあげることから、やはり汚らしい人が好みなのだろう。なにしろダウンジャケットの敗れた箇所に、ガムテープを貼ってきた男に一目惚れして運命の人だわ!っと飛びついたくらいだ。

 えーとなんだっけ、そう、掃除。こんなに掃除がきらいで、掃除機をかけることはめったにないというのに、4年の間に4台も買い替えてしまった。1年に1台の計算だ。吸引力が見事になくなってしまって、それでもついコードレスに手が出てしまう。これはあれか?あまりにもゴミが強力すぎるからか?そもそもゴミに強弱があるのかないのか知らないが、溜め込むとえらいことになる、ということだけはなんとなくわかった。  こんなわたしだが、年末の大掃除だけは欠かしたことがない。
「今年こそはやめよーかな〜」
と思いつつ、けっきょくは数日かけてやっている。あの行事がなければ、うちの台所や窓やお風呂場、トイレなど、どうなっちゃうかわかったもんじゃない。幸いオンが、大掃除をなんらかの呪いと思っているらしく、「やらないと来年不幸になる」ということを信じ切っているようで、大変重宝している。
 そしてきれい好きなオカンはというと
「一年中きれいだからやる必要はないの」
とのこと。
 それでいい。それがいいと思う。小学校のころは紅白やゆく年くる年の放送中は音が流れているだけで観ることができなかった。年が明けても朝方まで模様替えや掃除をしていたのである。掃除に終わり掃除に始まる。そんな年越し死んでももういやだ。   大人になってよかったなんてぜんぜん思わないけれど、眠たい目をこすりながら、いつまでも掃除を手伝わされたあの時代を思うと、今は天国だ。


本日のオススメ本ですね。 フツーの人のフツーの部屋を覗き見て妄想するたのしさ。住民不在。

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