どこへいった、地下鉄の美観活動
地下鉄のファインアートと心意気
掃除のおばちゃんの作品だと思いたい地下鉄トイレの名作です。
30年位前は、がんばってる地下鉄職員さんたちが多いものでした。
何にがんばってるかというと、地下鉄駅構内における美観活動です。美観といってもそこは職員なので、完璧ではないものが多く、私はそれを眺めるのがとても好きでした。
とくに丸の内線は、水槽が置かれていることが多かったように思います。
よほど居心地がよかったのでしょう、中にいた金魚はみんなデブで醜い。醜いというかかわいい。かわいいというか醜くて……つまり、ホメてます。
銀座の金魚は名前が付けられていましたっけ……。
手書きの説明(腹が白いのがタロウとかそんな感じ)が、「通勤ご苦労さまです!」のメッセージとともに水槽の右上に貼ってありました。
とはいえ、そこは金魚ですから、みんな腹が白かったりしてどれがタロウだかさっぱりわからない。駅員さんに訊いたら、
「わかりませんねえー」
と、あたりまえのように言う。デブの金魚を見ながら目を細める職員さん。そんなところもよかった。
こんな感じの飼育係がいそうな水槽です
地震対策でしょうか。あれはどこだったかナマズのいた駅もありました。カメもどこかにいたような気がするけど、もしかして夢かな。ナマズ、あれはいました。かわいかったから覚えてる。
そんな手作り感あふれる駅の水槽はめっきり減ってしまって、ちょっとというかそうとうさびしい。
あったとしても、ガッツリ設備の整った「プチ水族館」のような立派なもので、管理は業者の方がなさっていると見受けられます。そこには名前のついた金魚も熱帯魚もいません。プラスティックのような美しい物体のみが、優雅に泳いでいるだけです。
職員さんたちが、ニコニコしながらエサをつまんで与えてる、そんな姿を思い浮かべられないとなると……うーん……今後立ち止まって、「おいコラ」と言いながら、魚にちょっかいを出すことはない気がします。これもねー、時代ですかねー。
金魚といえば訃報をもうひとつ。
以前紹介した、伊藤さんちの「顔色をうかがう金魚」ですが、アレは本当にテレビに取材されてもいいくらいの天才集団でした。しかしながら、凶暴犬アンジュがやってきてからストレスにより全滅。気の毒でなりません。本当にアンジュはロクなことをしない。
合掌。